強引な次期社長に独り占めされてます!
「私が計画してたのは上原さんの家に行くことだったので、夕飯までは想定外だったんです」

「いや。なんか業務連絡みたいに言われるとつられそうだからやめてくれ」

言われてみて確かにその通りだと思えた。だって、緊張してるんだもん、大目に見て欲しい!

「今日はバレンタインなんだもん」

「ああ? バレンタインって、貰わなかったか? 金曜日に」

「あれは事務所の女子社員からのバレンタインチョコです! 皆でお金出し合って、事務所の男性社員に配っただけなの!」

「……へー。あれで終わらせるんだと思ってた」

そんな事を淡々と言われてショックだ。

まさか全然期待されていなかったの?
確かに“意思表示”してないから、仕方がないとしても、それはあまりに衝撃的な事実だ。

「帰る!」

半ば涙ぐみながらシートベルトを外すと、主任は慌てて車を停めて私の手を掴んだ。

「ごめん。悪かった」

「知らないです! これでもいっぱい考えたんです! 考えたのに……」

片手を掴まれたままだから、空いている方の腕で泣き顔を隠すと、急に椅子のリクライニングが倒れてギョッとした。

……人間、突発的な事があると、どうして頭が真っ白になっちゃうんだろう。

「違うこと考えて、返事が上の空だった事は認めるから泣くな。今、泣かれるとあやせないから困る」

「あやさなくていいですから! 私は赤ちゃんじゃないんで!」

怒って主任を見上げると、彼の視線がふわふわと車の外にさまよった。

「あー……まぁ、そうなんだけど」
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