強引な次期社長に独り占めされてます!
とりあえず身体を起こして、リクライニングを元に戻し、それからシートベルトもつけ直すと主任を見た。

「何を考えていたんですか」

「いや……あまりにも下世話な話になるから、やめておく」

ボソボソと呟き、主任はまた運転に集中する。

……もしかしてアレかな。
実は妙案は、沢井さんからも進呈されているんだ。

『松浦さんにリボンをかけて“私がスイートチョコです”でいいんじゃないのか?』なんて言われて。

もちろん『却下』と言う幸村さんの一言と、『それじゃかなり頭のイタイ人になっちゃうよ?』と言う野間さんの心配により、退けられているけど……それなのかな。

沢井さんはしゃべりが“男っぽい”だけではなく“思考もオヤジっぽい”人なんだと改めて認識した。

「実は経理って、不思議な人の集まりですよね」

ポツリと呟くと、主任は眉を寄せてチラッと私を見る。

「俺はまともだけど」

「一番まともなのは野田さんのような気がしてきてます。今、私も不思議カテゴリに分類しましたね?」

「いやー……野田は見た目は普通っぽいけど、あれはあれでちょっと変わってるぞー?」

「どんな風にですか?」

今まで見てきた感じだと、野田さんは一番“普通”な人なんだけど。

「いや。興味持たれたらムカつくから言わない」

サラッと返ってきた答えに、目を丸くして主任を見た。

「……ムカつきますか?」

「前にも言ったろうが」
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