強引な次期社長に独り占めされてます!
何を言われたかな。たまにしか言われないなら、覚えていられたんだろうけど。

「主任と私、けっこう色んな事を言ったり言われたりしてますよね」

「まぁな。てか前もっていっておくけど、俺のうちには米がないぞ?」

お米がない?

「一応、簡単なツマミくらいは作ることくらいあるが、お前のうちほど調理器具が揃っているわけじゃない」

調理器具もないの?

「なに食べて生きているの?」

ぼんやり呟いたら、フッと笑われた。

「自炊しないって言っただろうが。うちの近所の定食屋に行くか?」

「やです。頭がもう作るモードだもん」

「けっこう頑固だなー」

そんな事を言いながら、目的地に着いたらしく、主任は駐車場に車を停めた。

「マンションに駐車場ないから、ここから少し歩くぞ」

「はい」

私を見た主任が、驚いたように目を丸くする。

「本当に嬉しそうだな? 目は真っ赤だけど」

「そんなに赤いですか?」

「まぁ、しばらくすれば戻る。気のいい人たちだから面食らうかもしれないが、悪気があるわけじゃないから」

何の事を言っているんだろう。

不思議に思いながら車を降りると、すでに降りていた主任が手を差し出しているから、普通に手を繋いだらビックリされた。

「……荷物も貸せ。重そうだから」

繋いだ手と、持っていたトートバックを見比べて真っ赤になる。

いや。だってさ。いつも主任、手を繋ぐからさ。

まさか荷物持つよって意味で、差しのべられた手だとは思っても見なかったよー!
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