強引な次期社長に独り占めされてます!
笑いを堪えている主任に、顔を真っ赤にしながら無言でトートバックを渡すと、手は繋いだままで商店街に向かった。

小さな通りにある商店街は、こじんまりとしている。

すぐそばに花屋があり、あっちに喫茶店、こっちに魚屋、そっちには古本屋、あそこにはお肉屋。

ぎゅっと街のいろんなものを、詰め込んで、パッケージにしたみたいな通りが続いていた。

「あれ。上原さん。彼女連れ?」

花屋さんから、カメラ片手に男の人が出てきて、主任はニヤッと笑って振り返る。

「そう。山本さんは休み?」

山本さんと呼ばれた男の人は、主任を見て、それから私を見て、チラッと繋がれた手を見下ろした。

「うちの会社は基本的に土日休みだよ。って、何だか可愛いことしてんだねぇ。写真撮ってあげようか?」

「遠慮しときます。うちの可南子はきっと嫌がるから」

ズバリ正解です。
今は目が赤いんだろうし、顔も赤いんだろうし、前髪切ったばかりだし。

でも“うちの可南子”とか言われた。

「残念。手を繋いで歩くカップルはうちくらいだから、いい被写体なんだけどなぁ」

「はいはい。ごちそうさまです。隠し撮りもやめてくださいよ」

笑い声に手を振って、主任は歩き始める。

「お花屋さんのご主人ですか?」

「あー……まぁ、お花屋さんのご主人だけど、山本さんは古本屋さんの次男坊。ああ見えて、大手商社の社員さんだ」

お花屋さんのご主人だけど、古本屋さんの次男坊で、本人は大手商社の社員さんなの?

「花屋さんの娘さんと去年結婚したから」

「は、はぁ……」

婿さんってことかな?
< 218 / 270 >

この作品をシェア

pagetop