強引な次期社長に独り占めされてます!
なんだか色々あるんだ。

考えながら歩いていると、今度は横から威勢のいい声がかかる。

「雄之。べっぴんさん連れてどうした!」

ふくふくとしたおじさんが、目を丸くして大きな魚を持っていた。
魚屋さんだ。たくさんのお魚が並べられている。

「彼女。今日は飯作ってもらうんだ」

主任が楽しそうに言うと、おじさんは驚きながらも私を見てにんまりと笑った。

「そりゃよかったな。じゃ、うちの魚はどうだい? 今なら鱈とか鰤が旬だよ」

鱈と鰤。言われた瞬間に“何が作れるのか”を考え込むと、主任がキョトンとして私を見下ろす。

「魚料理にするのか?」

「んんん……まだ決めてないんです~。一回りしてからでもいいですか?」

「いいけど」

そうして商店街を歩いていたら……。

「あれ。上原さんと松浦さん?」

聞き覚えのある声に振り返ると、コンビニの袋を持った高井さんがそこにいた。

思わず主任と視線を合わせたけど、何事も無かったように主任は微笑んで片手を上げる。

「今日は休みか?」

「休みっす……てか、松浦さん、やっぱり上原さん好きだったんだ?」

繋いだ手を見つけて高井さんはニヤリと笑うと、フランクに挨拶をしてからいなくなった。

それをふたりで見送る。

……高井さーん。そんな事をサラリと発言していなくならないでー!
< 219 / 270 >

この作品をシェア

pagetop