強引な次期社長に独り占めされてます!
主任は冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出して私に手渡すと、なんと引き出しからグラスを取り出した。

「一応。食器はここな?」

洗い場の下を開くと、カレー皿一枚とスープカップ、それからフライパンとプラスチックのザルとボウルを見つける。

「んで、箸とかはここ」

もうひとつの引き出しを開くと、スプーンとフォーク、それから果物ナイフが……。

……こんな生活感のない人、初めて見た。

「んで、調味料はこれだけ」

上の棚からかごを下ろし、塩とコショウと、胡麻油と一味唐辛子の小瓶。

「……これじゃ何も作れない」

「うん。まぁ、ほとんど商店街で済むから……」

そっと背中を押されてリビングに戻ると、主任はテーブルにグラスを置いてから直接ラグの上に座った。

「可南子がうちで何か作りたいって言うなら、来週買い物に行こう。今日はとりあえず惣菜で我慢してくれ」

ガサゴソと袋の中から、おいしそうなからあげとコロッケ、それからエビチリとサラダのパックが出てきた。

「後、こっちはまっさんからと、定食屋の姉さんからの差し入れ」

お魚の煮付けと、パック入りの炒飯がふたつ出てくる。

「まっさん?」

「魚屋のおっちゃん。あそこの夫婦にしばらくからかわれるぞ、俺」

「ご、ごめんなさい」

慌てて謝ると、主任は首を振ってビーズクッションを指差した。

「嬉しかったし。いい……。それよりも座って食べよう」

何となく照れくさくて困るなか……ふたりで黙々とお総菜を食べる。
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