強引な次期社長に独り占めされてます!
本当に久しぶりに話しかけられてビックリした。正直、まともな態度じゃなかったと思う。

だって、どうしていいかわからない。

急いでコートとバックを手に取ると、ロッカー室を飛び出して……。

飛び出した先に、コートに身を包んだ主任が、いつも以上に難しい顔をして仁王立ちで待ち構えていた。

「可南子。話がある」

えーと。まぁ……何だろうなぁってなるよね。

でも、たまには見逃してくれてもいいと思うんだ。

視線をそらしながら、持っていたコートをモサモサと着て、それからバックを持ち直した。

「今日は寝不足なので、また今度にしてください」

「却下だ。連れて帰る」

「は……ええ?」

腕を掴まれて、強引に引っ張られながら連行される。

「ちょ……主任? だから、今日は!」

まだ頭のなかでいろんなものが消化しきれてなくて、整理整頓もついていないのに、まともな話なんて出来ない。

慌てて足を止めて踏ん張ってみたら、主任はそれを見て、なんと片手で私を持ち上げた。

「主任! ここは会社!」

「知ってる」

慌ててピッタリくっついた身体を引き離そうとするけど、離してくれそうもない。

真面目な顔でムスッとしたまま、警備室の前を通り過ぎ、目を丸くした警備員さんに見送られながら駐車場へ向かった。

……どうしよう。これは、絶対に拉致られる。

でも、暴れたら注目の的に……すでになっている気がしないでもないけど、余計になっちゃうよね。
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