強引な次期社長に独り占めされてます!
助手席にそっと座らされてシートベルトを着けてくれると、主任は勢いよくドアを閉め、難しい顔をしたまま運転席にまわってきて乗り込んだ。

……不機嫌そう。

でも、訳もわからなくてイライラしてるのは私の方だと思う。

主任は無言でエンジンをかけると、車を走らせ始めた。

いつもよりエンジン音が騒がしく耳に聞こえてきて、それが主任のイライラを象徴しているみたいに感じる。

「……悪い」

何が?

「とにかく部屋に着いてからだ」

話が……と言うこと?

微かに頷いて外を眺め始めた私に、小さく息を吐き出す音が聞こえた。

そして沈黙のまま主任の部屋につき、大きなクッションに座らされる。

そのまま主任はキッチンに向かい、なにやらレンジで温めた“チン”という音が聞こえた。

甘いにおいが近づいてくる。

主任はマグカップをテーブルに置くと、目の前に正座をして……いきなり頭を下げた。

「悪かった。お前へのフォローを忘れていた訳じゃないんだ」

あまりと言えば、あまりにも唐突な謝罪にポカンと彼を見下ろす。

「野間からは宮園の話しか聞いてないんだろう? お前の事だから、きっと変な方向に考えていると思って……」

変な方向に? 私なら変な方向に……って、ちょっと失礼じゃない?

「何がですか……」

「言っておくが、俺は可南子を疑ったことはないからな?」

「……え?」

……それはどうなんだろう?
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