強引な次期社長に独り占めされてます!
じっと黙って見つめていたら、主任はちょっとだけ情け無さそうに私を見て、困ったようにまた視線を逸らす。

「俺が新人見ているのは普通なんだが……そんな感じに見ていなかったらしい」

「はい?」

「だから、俺が……その……」

とっても言いにくいみたいだけど、なんの話?

難しい顔でますます困っていく主任に、私もつられて難しい顔になってしまった。

「主任?」

「この前は雄之って呼んだのに……」

……え?

とてもとても悲しそうな顔をされても、そんなのいつ……?

考えてみるけど、よく覚えて……いや、覚えてる。

それってあれだよね? この部屋で、初めて主任に……。

思い当たって、みるみる顔が熱くなった。

「今、それ関係ないから!」

思いきり叫んだら、主任が吹き出して笑い始める。

「主任!」

「いや、悪い。ひとりだけ恥ずかしいのは嫌だったんだ」

何が恥ずかしいって、絶対に私の方が恥ずかしい!

こんな時にそんな事……そんなの。

なんなのこの人、なんなの!

視界がどんどん歪んでいって、何だか悔しい!

「主任、意地悪過ぎるんだから!」

「いやいや、そんなつもりはないんだって。泣くなよ。お前は泣き虫だな」

「泣き虫なんかじゃありせ……」

言いかけたら、ふわりと抱きしめられて、その暖かさに何故かホッとする。

……私って、簡単な人間なのかな。
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