強引な次期社長に独り占めされてます!
「まってまってまって。私はどんな“プロポーズ”にも“はい”って言ってないからね?」

「いずれは“はい”って言うつもりなら、同じだろ?」

「同じじゃない! 絶対に絶対に違うんだから!」

叫ぶように言うと、雄之さんは何を思ったのか私を抱えあげて、そのまま静止する。

「断るつもりだったか?」

真剣な顔をする彼に、真面目な表情を返した。

それは……ないかな。

「……断らないけど……何だか腑に落ちないって言葉がピッタリ」

「俺もだよ。なんでお前相手だと、俺は計画通りいかないんだ?」

「知らないですから!」

バタバタ暴れ始めた私を抱きしめて、雄之さんは小さく笑った。

「仕方がないか。魔女に魅せられたんだもんな」

魔女に……魔女にねぇ?

「じゃあ、私は死神に目をつけられたわけですね」

抱き返しながら呟くと、彼はゆっくり私をおろして……。

そして、覗き込みながら艶然と微笑む。

「そうだな。お前の魂ごと、すべては俺のものだ」

そんな事を言うから、まじまじと雄之さんを眺めていたら……。

ふいっと視線をそらされた。

「あまり見るな」

どうやら死神さんは、おかしなことに照れ屋らしい。

拗ねたように赤くなった横顔を見て、笑ってしまう。

たぶん……ううん、きっと。

私が希望するような、ロマンチックなプロポーズはできないだろうなぁ。

そんな事を思いながら、ぎゅっと暖かい温もりに包まれる。
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