強引な次期社長に独り占めされてます!
「……そんな、ご迷惑はかけられません」

「今日は水曜だから、木曜、金曜と休めば土日はカレンダー通りだろ?」

そんな……当然と言えば当然だけど『だろ』って言われても、なんて答えればいいのか迷う。

「迷惑をかけたのは高井。君は気にするな。確かに僕が月次報告書をいちからやるより、君が途中まであげてくれたデータを仕上げる方が楽だから」

それはそうだろうけど。明日、何時に退院するかはわからないけど、私が出社すれば問題ないように……。

その考えを読んだかのように、上原主任は真面目な顔をして首を振った。

「今は安静にしているから感じないだろうが、よく考えてみろ。退院してその日に出社して仕事しろって、それじゃ鬼だろ」

さっきと、言ってることが違うような気がします。
さっき、上原主任は“締め切りは金曜日だから安心しろ”的な事を言ってなかった?

「お願いできるんですか?」

「……やらないとは言ってない。何のための上司だ。程度によっては明後日出勤お願いしたいところだが……少し痛々しくなってきたな」

よく……飲み込めないけど、最初から上原主任は、月次報告書をまとめてくれるつもりだったということ?

またまた不思議そうにしたら、上原主任が目元を和ませ、急に身を乗り出してきたからビックリした。
それからそっと、私の前髪をわけて耳にかける。

「僕はこっちの方がいいな。人と話すときは目が見える方がいい」

「はぁ……」

「パスワード教えてくれるだけでいいから、少し休め。君の友達が来たとしても野間が社に戻ってからの連絡になるだろうし……」

あ。そうか。

慌ててパソコンの個人認証番号を伝えると、上原主任はそれをただ頷いて聞いていた。
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