強引な次期社長に独り占めされてます!
鏡で見ると肌は白く塗りたくられて青白く、アイラインはくっきり太く入れられて、目の脇にはアートさながらに蝶のシルエット。

ラメ入りのブルーのアイシャドウを乗せられて瞼はキラキラしているし、眉はいつもより少しきつめに見える。

瞬きをすると盛られた睫毛がバサバサするし、唇は赤黒く塗られてぷっくりギトギト。

「……芽依。グロス気持ち悪い」

「黙りなさい」

ぶつぶつ言っても始まらないけど、まったく別人みたいな私が鏡に映っていた。

「……何だか知らない人みたい」

「そうなるようにしたもの。これだと会社の人に気兼ねせずに遊べるでしょ?」

……そうかも知れない。

パチパチと瞬きをすると、鏡の中の私はとても色っぽく見えた。

「たまにはハメ外しなよ。もう23歳なんだから、真面目に堅苦しく生きてたら、いつか爆発するよ?」

「……はぁーい」

まぁ、せっかく楽しみに来ている芽依を化粧室に拘束しているわけにもいかないし、しぶしぶ会場へ戻った。

「よし。じゃあ、可南子。私は柊のところに行ってくるね」

「えぇ~。置いていっちゃうの?」

「私に付きまとっていたら、可南子だってバレると思うけど?」

それは嫌かも。

しょうがないからオレンジジュースのグラスを取ると、壁際にピッタリくっついて手を振る。

あきれた顔をしていたけど、何も言わずに芽依は離れていった。
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