強引な次期社長に独り占めされてます!
「予想していた通りだな」

何がですか?

無言でいたら、ずいっと炒飯のお皿を差し出された。

「それは……私が頼んだものではありません」

炒飯と、野菜ネギラーメンを頼んだのは主任じゃないか。

「僕は大食漢ではない。君の分だ」

主任はデスクに座りながら、ずいっとまた炒飯を突きつけてくる。

「腕が疲れる。早く受けとれ」

慌てて受けとると、プラスチックのレンゲも渡された。

「あの……」

「頑張りは正当に評価する」

無表情にそんなことを言われても、何だか素直に受け取ってもいいものか迷う。

こういう時、今までの男の子は何かしらイタズラしてきたから……。

そっとかかっていたラップを取って匂いを嗅いでみたけど、香ばしい胡麻油の匂いがするだけで、どこからみても美味しそうな炒飯にしか見えない。

……出前を頼んだお礼?

恐る恐る主任を見ると、どこか可哀想なモノをみるかのように眺められていた。

「炒飯ひとつに、そんなに警戒しなくてもいいと思うが……僕はそれくらいならおごるぞ?」

裏があるとは思わなかったけど、何かあると思ったのは確かだから、椅子に座って頭を下げた。

「いただきます」

「ちなみに、おごったことを盾に仕事も押し付けない」

……主任はまだ気にしている。

「個人的な事ですから。気にならさずに……」

「ふーん?」

ふーん?

キョトンとしてみたけれど、主任はパチンと割り箸を割るとラーメンを食べ始めた。
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