強引な次期社長に独り占めされてます!
「い……いいです」

ただでさえ男の子は苦手なのに、ほとんど話したこともない人とだなんて気詰まりです。

「遠慮はしなくていいよ。まだ病み上がりなんだし、ちゃんと送るからさ」

元気一杯の笑顔で言われるけど……。

送るとか、送らないとか、それはどうでもいい……。いや、よくはないけど。その前に、車みたいな狭い空間で見知らぬ人と一緒なんて嫌なんです!

「困ります!」

「どうして? 帰りは電車かバスでしょう?」

帰りは電車ですが……。

「お心遣いはありがとうございます。そうは思います。でも結構です。私……苦手なので」

じりじり下がると、ガチャリと背後で音がして主任が顔を出した。

「松浦。取り込み中悪いが、そういうのは表に行ってからやれ。会話が筒抜け……」

「助けてください!」

主任の驚いた顔と、高井さんのギョッとした顔。

パタパタと事務所に戻ると、野間さんの近くに行ってしゃがみこんだ。
そんな私を主任は絶望的な顔をして振り返り、ドアの外を見る。

「……あー。とりあえず、今日は帰れ、高井」

「お、俺、何もしてないッス!」

私も何かされた記憶はないから、構わないで!

「わかってる。申し訳ないが、ちょっと教育が遅すぎたようだ」

何かやり取りしているけど無視していたら、野間さんに困った顔をされた。

パタンとドアが閉まる音がして、主任がツカツカ近づいて来る。
< 45 / 270 >

この作品をシェア

pagetop