強引な次期社長に独り占めされてます!
「ところで、お前は男に怖い思いでもさせられたのか?」

「え……?」

唐突な話にびっくりして主任を見ると、いつも通りの真面目な横顔が見えた。

「……怖い……と、言いますか」

嫌な思い出しかないなぁ。
毎日のように言われる『デブ』『ブス』『不細工』はまだいい方。

たまに言われた『風船』『ブタ』『化け物』は人間否定だったと思う。

それから「やめて」って言っても髪を引っ張られたり、毎日後ろから消ゴム投げられ続けたり、しまいには学級会の議題になったことは昔の話だよね。

「過去に付き合った男に何かされのか? まぁ……男相手にする話でもないだろうが、そこわかってないと教育もへったくれもねぇからな」

ブツブツ言われた言葉は乱暴だけど、さっきまでの粗悪な声音とは違って落ち着いている。

……この年齢だと『男の人に何かされた』は、色んな意味にもなるかもしれない。

確かに付き合った彼とは“何”も無かったわけではないけど。それは同意の上での大人の話だし、それは言わなくてもいいはず。

「何もないんですけど……」

「何もなくてあの反応なら、ちょっとどうなんだよ。男子はすぐいじめるんだろ? 要するにトラウマか?」

トラウマ……ですかね。

「私だって、ブスとかデブとか言われたら傷つくんです……」

ボソボソと答えて、窓の外を見る。

見た瞬間に、むにっと頬をつねられた。
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