強引な次期社長に独り占めされてます!
「知り合いは……いないのか?」

低い声は、紛れもなく人間の男の人。

よく見ると、ドクロの仮面は目もとだけを隠すタイプで、ちゃんと口元は人間の顔が見えた。

「驚かせたか?」

「……少し。でも大丈夫です。では、失礼して飲み物もらってきます」

その場を離れようとすると、突然手を掴まれて立ち止まる。

「僕がもらってこよう。カクテルでいいか?」

「……あ、まぁ……」

お酒は飲んだことはない。
……でも、まったく好奇心がないわけじゃない。どうしようか考えて、顔を上げた。

「じゃあ……軽くて飲みやすいカクテルを」

「……ここにいてくれるか?」

仮面の下で微笑まれたような気がして、少し顔が熱くなった。

彼は手を離すと人混みにまぎれ、私は溜め息をついてまた壁際に寄りかかる。

これは、人生初のナンパなのかな?

……ええと。まさかね?

瞬きをすると、バサバサと睫毛が重たい。そう言えば、お化粧が濃いんだった。
……そっか、だから綺麗にみえたのかな? 普段の私なら見向きもされないだろうし。

でも、なんだろう。気分はいい。

他人から見たら別人に見えるのかな?
見えるんであれば、私だってバレない? バレないんだったら……。

考えている途中で、彼がグラスをふたつ持って戻ってきた。
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