強引な次期社長に独り占めされてます!
「……あ、あにょ?」

つままれているせいで、フガフガと変な言葉になる。

車はいつの間にか路肩に停まっていて、真面目な顔をしながら主任は私の頬をふにふにつまんで……。

「にゃにふるんれすきゃ!」

叫んでから、主任の手を掴んで離した。

「そのフレーズは太ってる女に言う言葉か、思春期に好みの女に男が言う言葉だろ。お前、太ってるか?」

「昔は太っていたんですっ!」

もう! なんて事を言わすんだ、この人!

「いやぁ……さすがにもう言われないだろー。言われたのか?」

言われはしなかったけど、付き合って、抱かれた男の人にはお腹をふにふにされた。それが嫌で嫌でたまらなかった。

そんな事を考えていると、突然視界が開ける。

主任がまた勝手に人の前髪を持ち上げていた。

「美女ってわけじゃないが、笑ったら愛嬌あって可愛い部類だと思うが」

暗がりのなか目が合ってムッとする。
大人の男の人がお世辞を言うのは、常識的過ぎて私でも解る。
そうしていたら、主任はクスッと笑った。

「……なるほどなぁ。お前は自分自身には、丸っきり自信がない奴だったか。仕事だけの付き合いじゃ、わからないわけだな」

「私と主任とは、仕事だけの付き合いですから、それでいいと思います」

「いいや、よくないから。お前、今週の土曜日は暇だろ」

暇か?と、聞くでもなく、暇だって決めつけられた。
< 50 / 270 >

この作品をシェア

pagetop