強引な次期社長に独り占めされてます!
私だって女子の端くれなんだし、それなりの回避はするよ。

そういう経験は少なくても何となくは知ってるし、友達から色んな話を聞いて……。

聞いて、好きな人がいる人を羨ましくなる時もあった。

でも、私の場合は好きになる前に“私なんか……”と思っちゃうけど。

それから私を馬鹿にしないか、なんて事を考えて、いつも悪循環になっているのにも気づいている。

「松浦は彼氏いらないわけ?」

ポツリとなされた言葉に、顔を上げて眉をひそめる。

「私、思うんですけど。高井さんもそうですが、主任も、私には“彼氏”が居ないって思ってますよね?」

「そんなもん話してたらわかるだろ。特定の誰かがいて引くような感じじゃねぇし、そもそもお前ははなっから“男は意地悪するもの”って考えてるなら付き合いようがないし」

「……そういうものですか」

「まぁ、彼氏がいたところで俺は気にしねぇがな」

主任はそう言って、いつの間に取り出したのかガムを口に入れると、それを噛みながらガムの容器を私につきだした。

「あ。いえ。私は……」

ガムを断り、言われたことを考えながら首を傾げる。

「主任は、私に彼氏がいても気にしないんですか?」

それはどうなんだろう? 頭の中ではめくるめく昼ドラが展開されようとした瞬間に、主任の唇が笑みの形に変わった。

「男は意地悪するものって頭から思ってるやつは、彼氏にも意地悪されてんだろ? あの狼狽ぶりからすると、男がいたとしてもお前は相手の事をいわゆる“好きな相手”としては認識してないってわかるし」
< 58 / 270 >

この作品をシェア

pagetop