強引な次期社長に独り占めされてます!
「……はぁ」

すんなりと思考には浸透しない言葉だけど、言われたことを考えてみる。

私の“好きな相手”か……。

昔、紹介されて付き合った彼は、好きだったと思う。

好きだったから、求められるまま応じたわけだし。

でも、その後がひどかったんだけど……。

「そんな危うい均衡で保っているような付き合いなら、ぶち壊せばいいし」

あっけらかんとした主任の言葉に、自然と考え込んでいたことに気がついた。

でも、ぶち壊す……? それって普通、仲を引き裂く以外のなにものでもないんだけど。

「……主任て、どういう人ですか」

「さあ? 俺様なら聞いたことあるけど、野間なら、ただのガキ大将って言うだろうな」

俺様もガキ大将も、いじめっ子の代表格みたいな代名詞なんだけど!

引いたら、また目が合った気がした。

「そうかそうか。お前のトラウマはけっこう昔だな?」

「か、軽々しくトラウマを連呼しないでください。しかも何故、主任にそんなことを教育されないといけないんです」

「まぁ、教育とか指導ってのは口からデマカセだよな。だからお前は気を付けろって言ってんだよ」

デマカセ……そうなの?
そうなの……って、どうなの?

「俺は本気のデートって言ったよな。本気でって言われてんだから普通は口説かれてるってわかるだろ」

「わかりません。私は人に好かれる要素なんて何一つありませ……」

カチャンと音がして、主任がシートベルトを外す。

外して、真面目な顔で私に向き直った。

「着いたぞ。降りろ」

私のシートベルトを外すと、自分はさっさと車を降りていく。
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