強引な次期社長に独り占めされてます!
無言でグラスを渡されて、愛想笑いを浮かべる。

「ありがとうございます」

彼は無言で頷いて私の隣に来ると、同じように壁に寄りかかった。

「そういう化粧をしている女性に言うのは失礼かもしれないが、綺麗だね」

「はい。友達にしてもらいました。メイク関係の仕事なので、まるで別人になった気がします」

受け取ったカクテルをひとくち飲んで、広がる甘さに首を傾げる。

オレンジジュースみたいだけど、何だかちょっと違う。なんだろ甘い。

コクコク味を確かめていたら、ちょっとだけ窺うように、隣の彼がまた話しかけてきた。

「あの……」

「はい?」

「さすがに僕でも、メイクはわからないので褒めない」

「……そ、そう、ですか」

それって、私が褒められているの?

「目が綺麗だと思うから、フードで隠すのは残念だと思って」

「目も、アイラインでいつもより三割増ししてますし、マスカラで睫毛も長くなってます」

「……目の輝きが綺麗だと、具体的に言った方がいい?」

それはとってもわかりやすく、超具体的な口説き文句に聞こえます。
< 6 / 270 >

この作品をシェア

pagetop