強引な次期社長に独り占めされてます!
つ、つかめない……主任という人が全然つかめない。

平日の仕事中は真面目な堅物イメージなのに、言っている事がコロコロ変わったりするのは優柔不断?

ううん。優柔不断は、優しく柔らかく何も決断しないって事だよね?

決めてはいるよね、さっきから一方的に……。

溜め息をついていたら、助手席のドアがいきなり開いた。

「行くぞ、ほら」

差し出された手を見つけて、主任を見上げる。

……この手を取れとでも言うつもりでしょうか。

無言でいたら掴まれて、そのまま手を引かれて車から降りた。

それがとっても恥ずかしい。

「ああ。これはわかりやすい」

低く笑いを含んだ声に顔を上げると、ドキリとするくらいに大人の色香を纏う主任が見下ろしていて……。

何の事を言っているかわからないけど、とりあえず話題を変えた方が良さそうな気がした。

「しゅ、主任。身長何センチですか」

眉が上がって、今度はからかうような雰囲気になる。

「確か、健康診断では185だったかな。松浦は?」

「わ、私は158です」

「あ~。普段は靴のヒールが高いのか。月曜から縮んでてびびった」

チビだって言いたいんですか?

ムッとしたら、主任が笑いながら空いている手でささっと私の前髪をわけて耳にかける。

「しゅ、主任。やだ……」

慌てた私に構わず歩きだされてしまう。

「今日は前髪を上げてろ。まわりを見るのも今日の課題だ」

「課題ですか~?」
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