強引な次期社長に独り占めされてます!
「俺とのデートも、けっこう平気だろ?」

ゆっくりとトンネルを抜けると、水族館の出口だった。

夢から覚めたような現実感。隣りを見上げると、主任はどこか得意気に唇の端を上げた。

何だか納得できない。

「……私がまったく男性がダメな人間だったら、主任はどうするつもりでしたか?」

その可能性だってないわけじゃない。
自分でも、この間はものすごい拒否反応を示していたと思うし。

だけど主任は気にした様子もなく、次々と強引に話を進めていたけどね。

今だって普通の事をしているみたいに、ただ私を見下ろしている。

まぁ……口では“本気のデート”と言いつつも、まさか本気なわけがないから、そんなもんなんだろうなとも思えるけど。

「それは心配しなかったな。松浦から話しかけられる事はないが、こっちからしゃべりかけたら返事は返ってくるとわかっていたから」

「……そうですか?」

「そうだろう? 実際、お前が最初に助けを求めたのは俺だから。それなら俺は大丈夫だと踏んだ」

……そんな納得の仕方はどうかと思うけど。

でも、高井さんより上原主任の方が慣れているのも確かだよね。

あの時、他に選択肢はあまり無かったような気もする。
同じ男性なら、私はきっと慣れた人と話す方を選ぶし。

それに、主任は私の顔をまともに見ても嫌な顔をしてこない。

その差は大きいと思うんだ。

状況を考えてみると、たぶん高井さんも私の顔を見ているんだろうけど、病院での私は額にたんこぶ、青あざもある顔。
しかも彼と私は加害者と被害者の関係だったわけだし、あまり判断材料にならないから……。
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