強引な次期社長に独り占めされてます!
「もしかして、初めてなのか?」

な、ななななにが!?

これって間違いなくナンパだよね?

ナンパって、結構あけすけな人がいるって言うけど、何を聞いてきてるの?

「……うちの会社のハロウィンパーティ」

ああ。そっちか。うん……それはそうだよね。さすがにバージンなのって聞いてくる人はいないよね。

ちょっとド派手に勘違いしましたよ。

「はい。初めて来ました」

まだ社会人二年目。去年は欠席したんだからもちろん初めて。
ひとりで頷いてから、フロアを見回した。

「ずいぶんクオリティ高いですよね」

「君もなかなかだと思うけど。タイトな黒いロングドレスに、フード付きのロングケープ。竹箒とトンガリ帽子だったらもっと完璧」

「家にあるもので仮装しただけです」

けろっと言うと、彼は無言になった。
無言になって、いきなり私の肩に手を置く。

「……たまには楽しい事をしよう」

どうした事か悲しそうな声音に、さすがにムカッとした。

ど、どうせワードローブの中は黒ばかりです! だからって、楽しんでいないとでも言うつもりですか!?
楽しみ方なんて人それぞれでしょう?

服が黒だろうが、いつも俯いてばかりで猫背だろうが、社内ではほとんど誰ともしゃべらないだろうが、私は人生謳歌してますとも!

童話のなかでだけど。
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