強引な次期社長に独り占めされてます!
「この間はごめんね。万全じゃないだろうに、いきなり誘っちゃって」

ああ、いえいえ、それはもういいです。

「でも一回くらい、ちゃんとしたお詫びしたいし。今日……は、無理だとしても。明日、夕飯はどう?」

「え。いえ。ですから、そういうのは気にしなくてもいいですから」

「すみません、大丈夫……じゃ、こっちの気が収まらないし。お願い!」

パンッと拝まれて、一歩引いた。

……まぁ、それで気がすむなら、意固地になって拒否する必要はないんだけど。

「……私、一緒に食事をして楽しい人じゃないです」

「ああ、大丈夫。俺はうるさい人間だから。明日は定時上がり? 事務方は時間きっかりだよね」

「はぁ……」

変わった人だなー……。私が食事相手として楽しくないのと、高井さんがうるさい事が合致して、ご飯が面白くなる訳でもないだろうに。

「明日、社員入口で待ってるね」

清々しいくらいスッキリした笑顔を見上げながら、いいか……とも思った。

「あ。そうだ。これあげるよ」

手の中に何かを握らされ、それを見つめてパチクリとする。

オレンジのイラストと、レモンのイラストが描かれたキャンディ。

……これは、見たことがあるかも。
あるかもって言うか、確実にあるよね。

ハロウィンの夜、死神さんにもらったキャンディ……。
美味しかったから自分でも買おうかと思ったんだけど、どこを探してもなかった。
< 72 / 270 >

この作品をシェア

pagetop