強引な次期社長に独り占めされてます!
「君たち。そろそろ昼休憩終わる」

主任に言われて、芳賀さんは肩を竦めてパソコンに向き直る。

私もペットボトルのキャップを開けてお茶を飲んでから、パソコンのパスワードを打ち込んだ。

午後にこなす書類を分けながら、ぼんやりとこの間の主任とのデートを思い出す。

あのデートで、ちょっと気がついた事がある。

私が苦手なのは、口に出して意地悪な事を言う男の人。

でも意地悪な事を言うのは、別に男も女もなくて、言う人というのは関係なく言うものだし“男の人”だからって事もない。

確かに子供の頃は男の子の方が意地悪を言う確率が高かったけど、大人になった今、相手に対して失礼な事をズバリと言ってくる人もいないんだろうと思う。

深く付き合いさえしなければ、そんなことも言う人は、きっと“珍しい”部類に入るんだろう。

……と、考えてみれば、当たり障りない付き合いなら、私にだって出来ると思う。

一線を引いてしまえば、踏み込まなければ、深く関わらなければ……こちらが傷つく事もないし。

そう考えてみれば、普通に出来ると判明したんだ。

私だって芳賀さんと仲良くさせてもらっているけど、同じ経理課でも一部の人とはほとんど話すことはない。

仕事の事で話すことはあるけど、それだけだし。

たまにこっちを見ながら、ボソボソと誰かと話ながら笑ってるからって、気にしなければいいんだもん。

気にしなければ……。
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