強引な次期社長に独り占めされてます!
でも……あの頃は、まだ初対面の人でも普通に話せていたかもしれない。

よく知らない人は恐い。どう思われるのかとても恐くて話せなくなって……。

だけど、今は社会人だもの。

逃げてしまってばかりいて問題にならないけど、違った意味で問題になるのも確かだし、社交辞令に拒絶反応を起こすのもおかしな事なんだよね。

主任とデートが出来たくらいなんだもん、当たり障りなく人と接することもできるはずだし、出来なくはないと実感した。

笑顔で挨拶も出来たし……まぁ、驚かれたは驚かれたんだけど、人は珍しいものには構う性質にあるだろうしね。

最近、それがとてもよくわかったって言うか。

「松浦。計上ミスがある」

低い声に我に返った。

大変だ。仕事中に思い出に浸っていたよ。

「す、すみません。どこですか?」

振り返って主任のところまで行くと、主任はパソコンを見ながらミスをした書類を差し出してくる。

「伏せんを貼ってある。前回も似たようなミスをしているから、気を付けた方がいい」

「はい。気をつけます」

書類を受け取って席に戻りながら『あれ?』と、感じた。

いつも主任って、目が合わないにしろ人の顔を見て話すのに、今は思いっきりパソコンを眺めながら渡してきたよね?

忙しいのかな。忙しいのにミスをしてしまって申し訳ない気分だ。
しっかりしないと。それでなくても迷惑かけまくっちゃってるんだから。
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