強引な次期社長に独り占めされてます!
それから緊張しながら高井さんの車に乗って、エスコートされて連れていかれたのは、とても高級感が漂うお店。

飴色の木製ドアを開くと赤絨毯、短い廊下を抜けると小さな滝壺。


……滝壺!?


ギョッとしていると、出てきたボーイさんに案内されるまま店内に入る。

壁一面に水槽が埋め込まれていて、お洒落なバーのように薄暗くライトアップは控え目。BGMはクラシック。

……思えば、高井さんの姿がいつもと違って、コートの下にはスーツを着ている。

やばいです。これは余計に緊張するかも。

コートを脱いで椅子に座ると、微笑みを浮かべたままの高井さんも、少し戸惑っているみたいだ。

「……店を聞く人を間違えたかなぁ」

「だ、誰かに聞いたお店なんですか?」

「うん。専務に聞いたんだ。あの人はモテるから、いろんなお店知っているかも……と思って、言われるままにコースで頼んだんだけどさ」

高井さん、専務と仲が良いの?
重役クラスの人なんて、全く雲の上の人の話だよ。

そして、ふたりでズラッとテーブルに並んだナイフとフォークに苦笑しあった。

「せっかくだし楽しもう。俺はマナーなんて知らないから、間違っても笑わないって約束ね?」

「大丈夫です。私も知りません。たぶん、外側から使うんですよね?」

ここで“俺はマナーバッチリ”なんて言われたら緊張しまくっちゃったところだけど、ちょっぴり安心。

出てきたコース料理も落ち着いて食べる事ができて、高井さんのお話を楽しく聞きながら実際のイベントについていろいろと聞けた。
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