強引な次期社長に独り占めされてます!
「まぁ、残業の時とか、むしゃくしゃした時には甘いものは必須だよな」

主任は能天気に呟いて、コートのポケットに手を入れていた。

まぁ、頭使うときには糖分はいいって聞くしね。

「私、残業はあまりないですし」

「そっかそっか。次の決算期、お前残業な」

笑顔で言われて、思わず首を竦める。

これって墓穴を掘った?
それとも薮蛇ってこと?
たぶん墓穴の方かな。

かるーく残業言い渡されたよね。

「頑張ります~」

「お前、そこは一回拒否るとこだぞ」

真面目な顔で見下ろされ、真面目な顔をして見上げた。

「そうなんですか? では、嫌です」

「それはさすがに通らないだろ。他に言い訳考えろ」

いったいどうすれと言うんですか。

肩を落としながら社員入口を入ると、賑やかにロッカールームに向かう女子軍団の後ろ姿が見えた。

たぶん、営業部の女の子たちだと思うけど……あの一団にまぎれたくないなー。

そう思ってコートを着たまま事務所に向かうと、同じく事務所に向かう主任に不思議そうな顔をされる。

「ロッカーに行かないのか、松浦」

「はい。今日はいいです」

女子軍団の威力は凄いんですよ。
化粧品も香水も多種多様に混ざりあって、いい匂いのはずなのに、たまに気持ち悪くなって飛び出しちゃう時もある。

だけど、静かに飛び出すにも、けっこう勇気もいるんです!
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