強引な次期社長に独り占めされてます!
とりあえず事務所に入って、コートを脱ぎながら席に向かう。

「おはよう松浦さん」

「おはようございます」

朝一番に野間さんがいるのは普段通り、事務所に着くなり真面目な顔をして、挨拶を交わして自らの席に行く主任も変わり無い。

「松浦」

呼ばれて主任を振り返ると、握りこぶしを差し出されていた。

「……はい?」

グータッチでもしたいの?
え。今、何かそんな事をするような良いことあった?

「手を出してくれるか?」

「あ、はい」

主任のところまで行って手を差し出すと、バラバラとカラフルな包装のキャンディが落とされる。

……だよね!
いきなり何でもないのにグータッチとかしないよね!
かなり馬鹿みたいな勘違いしましたよ!

「あまり食べると虫歯になるからな」

「あ、ありがとうございます」

でも、私は虫歯を心配されるような小さな子供じゃありませんから……。

少しだけ呆れた顔をしたけど、主任は気づかなかったようで、何も言わずに席に座った。

私『甘いものを下さい』って、おねだりしたわけじゃないんだけどな。

いや、おねだりって何よ“主任におねだり”って、何だかちょっと変な響きじゃない?

変な響きって……何だか卑猥……。

違う違う! 私、本当にそれじゃ頭どうしちゃったの?って感じじゃない。

大丈夫なの私。これって欲求不満?
そもそも欲求不満って、私は何を主任に欲求してるの?
これじゃいけない子みたいじゃない。

「精密検査でも行こうかな……」

ポソリと呟くと、座っていた主任が真顔で私を見た。
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