強引な次期社長に独り占めされてます!
「メリークリスマス! 松浦ちゃん」

「おはようございます」

深々と頭を下げると、芳賀さんは花が開いたように華やかに、でも、ちょっぴり悪巧みでも考えているような感じににじり寄って来る。

「フライング・クリスマスデートはどうだったの?」

フライング……イコール飛ぶではないと思うけど。

いったい何の話ですか?

「ほら。火曜日になんとかさんと食事に行ったんでしょう? どうだったの?」

ああ、クリスマスをフライングスタートしちゃったって意味合いか。

「楽しかったですよ」

高井さんが男の子が好きだと聞いてビックリしたけど。

でもきっと公にアピールしたわけじゃないとは思うから、私は何も言わないようにしないとね。

だけど、芳賀さんは不服そうに顔をしかめた。

「そんな単調な声で言われても、ぜんっぜん楽しさが伝わらない!」

えええ。そんな注文を言われても、困りますー。

ワクワクしながら芳賀さんは席につき、パソコンの電源を入れてから私に椅子ごと近づいてくる。

「で、どこに食べに行ったの?」

「店名は聞いてません。ちょっと高級そうなお店で、緊張しました」

「へぇぇ? どこだろう。美味しかった?」

うん。そうですね。何料理かも私にはわからなかったけど……。

「コースでお料理が出てきて、料理も見た目が綺麗で、デザートのチョコレートムースが美味しかったです」

「コース料理だったんだ?」

芳賀さんがそう言った瞬間、近くでガン!と勢いよく引き出しが締まる音が響いた。
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