強引な次期社長に独り占めされてます!
飛び上がるくらい驚いて芳賀さんとふたりで顔を向けると、私たちのデスクの向こう側の席に、同じ課の幸村さんが立っている。

「お、おはようございます」

「おはよう」

幸村さんは芳賀さんよりも一年先輩。

毎日くりくりと髪を巻いて、ちょっぴりきつめの感じの美人さんで、いつも冷たい雰囲気を纏っていながら身につけている香水は甘い。

……同期の沢井さんと、何か話ながら私を見るから、たまに居たたまれなくなることも多数。

正直、私を見ながら内緒話はしないでほしい。

「若い子はクリスマスの事しか考えないわけ? まったく、朝からチャラついてるんじゃないわ」

席につきながら、幸村さんにボソリと呟かれて首を竦めた。

……すみません。ここは職場ですもんね。

だけど、芳賀さんはニッコリと微笑むと立ち上がって幸村さんを見下ろす。

「幸村さんも今日はクリスマスデートですよね? ロッカールームで見ましたけど、素敵な服を着てたじゃないですか」

「……ありがとう。でも私はデートじゃないの。あなたたちはクリスマスデートかしらね?」

とても不機嫌そうに言われて、幸村さんのちょっぴり冷たい視線が何故か私に突き刺さる。

「わ、私は、家に帰って寝ます」

はぁ?と言う顔をした幸村さんと、同時に、芳賀さんが私の肩をつかむ。

「え? 松浦ちゃん、高井さんは?」

「高井さんがどうして出てくるんですか」

芳賀さんの驚きに逆に驚いちゃうんですけど。
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