強引な次期社長に独り占めされてます!
「な、ななな、なんですか」

「松浦さん慌てすぎだから。別に帰っちゃうのねぇ……って、ただ思っただけなんだけどね。暇なら皆で飲みに行こうよ」

皆? 皆って?

事務所を見まわすと、部長も課長も人事の主任もいない。残っているのは私と上原主任と野間さんだけ。

「なんだ。俺もカウントされてんのか?」

主任は淡々と書類を眺めながら呟くと、書類に承認印を押してから、決済ファイルに入れて顔を上げた。

この状況で、私がカウントされてる方がビックリなんですが。

主任同士で飲み会はわかるよ?
でも主任ふたりに、プラス新米に近い私がいるのは絶対に変。

「上原主任はお財布がわりに決まってるじゃない」

背後から、野間さんの笑い声。

「おいコラ。同じ役職だろうが」

そして、目の前から主任の不機嫌そうな表情。

え。何、ちょっと待って?

「上原主任の方が先に主任になってるでしょ。それにクリスマスなのに女に払わせるつもりなの?」

「割り勘しろとは言わないが、最初から『払え』って言ってるようなのはどうかと思うが?」

どうでもいいけどふたりとも。私を挟んで言い合いしないでもらえませんか?

「あの……」

声をかけようとしたら、主任が溜め息をついて立ち上がる。

「じゃあ、行くか」

……これは、断ったらいろいろと面倒な事になりそうかも。
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