3m先の君に恋愛奮闘中
あっという間の放課後。
「未理、どこのアイス食いたい?」
「フォーティーワンのトリプル!」
「お、いいね」
テンポよく会話が進み、
私と龍はフォーティーワンへと向かった。
「それでね、実咲ってば…って 龍、聞いてる?」
「あー…うん」
お店に向かう途中、
龍はなにやら真剣に携帯をいじっていた。
もう、人が話してるのに。
なにやってるんだろ?
私は龍の携帯をそっと覗いた。
よく聞く名前のバンドの公式サイトが開かれていた。
「あ、それ!“D Grant”?」
「そうそう」
「龍、このアーティスト好きだよね」
「まぁね。つかみんな好きなんじゃね?
曲も歌詞もいいしイケメンだしな!
けどなんつってもボーカルが最高なんだわ」
龍は目を輝かせて話し出す。
よっぽど好きなんだなぁ。
「ボーカル?」
「そう。聴いてみる?」
そういうと龍はイヤホンを私の右耳にさすと、iPodの画面のPLAYを押して、音を流した。
〜〜♪ ♪ ♪
いきなり激しめの音が耳に流れだす。
「わっ…」
「ごめん。これライブの音源だからビビるかも」
龍はそう言いながら楽しそうに笑う。
聞きなれない音に少々耳が痛い。
まぁいつも東野カナとか恋愛系のアーティストしか聞かないもんなぁ。
そんな事を思ってると突然
まるで何かの楽器のような
きれいで透き通る声が響いた。
“お前らは
叶えられなかった 夢ってある?”
叶えられなかった、夢?
“俺はない”
え……
“夢は叶えるもんだから。
理想?夢物語?
笑わせんな。
いつだってどんな夢だって
俺は夢を、夢で終わらせない。”
“絶対に叶える”
……優しい声 。
でも、どこか芯の通った力強い声。
イヤホン越しからの音なのに
まるでライブに来ているような感覚が全身に広がった。
“お前らも諦めんな。
夢だなんて、理想だなんて
そんな言葉で終わらせんな。
夢じゃない。理想じゃねえ。
叶えてやれ。
叶えられない夢なんてない。
大丈夫。 俺らがついてる!”
ドンドドン♪
軽快なドラムの音にのせ
曲はさらに大きくなり、
彼の綺麗な歌声が響く。
彼らの音楽を、彼の声を、
夢中で聞いた。
そして
“叶えられない夢なんてない”
その言葉が私の中に大きく残った。