3m先の君に恋愛奮闘中
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「聞いて聞いてっ!
来週、D Grantのライブいけるんだ!」
「未理…あんたその話もう14回目」
「えっ…そんなに!」
「そんなに!じゃないわよ。
もう耳にタコができるほど聞いた」
実咲はいい加減にしてって顔で
私を睨む。
うっ…そんな顔されても。
だって、嬉しいんだもん。
今でも覚えてるあの感覚。
「生で聴けるんだよ?
そりゃあ興奮もしますよ!」
「それはわかるけど、流石にうるさい」
さっきよりも強く睨まれる。
…これは黙ったほうがよさそうだ。
あの日から1ヶ月。
私はD Grantの曲を聞きまくり、
ボーカルについて調べつくした。
分かったのはまず、名前は Ran。
そして、彼は
すごく紳士で熱い男だってこと。
…まさに理想通り!!!
でもそれだけ。
一ヶ月経った今でも
Ranは何者なのかあまりわからない。
だって個人情報や私生活を一切明かさないし、
あんまりメディアにも出ないから。
だから本名も知らないし、
歳だって雰囲気でしかわからない。
多分、私より少し上かなって感じ。
まぁ謎に包まれてる感じも
逆に燃えるんだけどね!!
彼についてもっと知りたい。
1ヶ月間、私の頭はRanでいっぱいだ。
「まさか未理がD Grantにハマるなんてな…」
るんるんで音楽を聴く私を見ながら龍が呟く。
「まぁ、いつか未理が叶わない相手にハマると思ったけどね」
か、叶わないって…
「叶わなくないもん」
Ranはいってたもん。
叶わない夢なんてないって。
だからね
「私、頑張るってきめたの!絶対Ranの彼女になってみせる!」
気合い入れにガッツポーズをする私に
「もう勝手にして…」
2人が大きなため息をついたのは
言うまでもない。