君を想う【実話】
話をしながら食事をしてると、家の電話が鳴った


「ったく、こんな時間に..」


お兄ちゃんは文句を言いながらも、電話に出る


「はい。え?そうですけど?..」


瑠奈はその様子を黙って見ていた





ガシャッ―




お兄ちゃんの手から、電話が滑り落ちる




そのまま動かない




「お兄ちゃん..?」



お兄ちゃんは、ハッとしたように急いで単車のキーを手に取る



「瑠奈、いくぞっ!」



顔面蒼白とは、まさにこのようなことだろう



お兄ちゃんの顔からは、血の気が引いていた



「早くっ!」



何がなんだかわからない瑠奈の腕を掴み、お兄ちゃんは外へ出る



瑠奈にヘルメットをかぶせて単車の裏に乗せると、そのまま勢いよく発進させた



「ねぇ!お兄ちゃん、どうしたのっ!?」



お兄ちゃんは、無言のまま答えない





自然と涙が溢れた..





いつもと違う雰囲気が怖くて―




"大丈夫だよ"って笑う海斗がいなくて―





信号待ちの間、お兄ちゃんは誰かに電話をしている




微かに聞こえる声は、震えていた..





< 128 / 436 >

この作品をシェア

pagetop