君を想う【実話】



「..海斗のとこにいこう」



お兄ちゃんは歩けない瑠奈を抱きかかえたまま、海斗の元へ向かう




ドアを開けると、大きなベッドに海斗は眠っていた




その横には、悲しみに暮れるパパとママとお姉ちゃんの姿




瑠奈はおぼつかない足取りで、海斗の横に立つ




いつもと何一つ変わらない、綺麗な寝顔




そっと、手を握る




いつも暖かかった海斗の手は、熱を失っていた..




もう二度と、この大きな手で瑠奈の頭を撫でることも



ポケットの中で、手を握ることも



優しく抱き締めてくれることも



涙を拭ってくれることも―





だから最後に、海斗の全てを焼き付けたい..





昔、海斗が瑠奈にしたように顔を指でなぞる




いつも見守っててくれた、優しく強い瞳



鼻筋の通った高い鼻



大好きなキスをする唇




もう、瑠奈の名前を呼ぶことも愛を囁くこともない..





瑠奈は、海斗の胸元を少しめくった





"RUNA"






俺の心は瑠奈のもの―






その上に、瑠奈の大粒の涙がこぼれ落ちる






そして、最後のキスをした..






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