君を想う【実話】
瑠奈は智也の鞄があるのを確認して、屋上へ向かう



智也が考えたり悩んだりする時は空を見上げるから―



外階段を駆けあがる





「とも―..」




そこには、空を見上げる智也



息をするのも忘れるほどに綺麗な横顔



瑠奈は一歩ずつ智也に近づいていく



「瑠奈..」



二人は見つめあう



先に反らしたのは、智也だった



「馬鹿..」



瑠奈が呟く



智也はうつ向いたまま顔をあげようとしない



「瑠奈は..智也がいなくなることのほうが辛かったのに..」



震える声、スカートの裾をギュッと握った



「ごめんな」



智也の手が額に触れて、指先が瑠奈の前髪を上げる



「..泣かせてばっかだな、俺は」



そう言って、次の言葉を飲み込んだ





笑顔が見たいのに―





早くいつもみたいに言ってよ..





そしたら瑠奈は笑うから





一番の笑顔で笑うから..






「健一なら、瑠奈のこと幸せにしてくれるから」



悲しい笑顔





何処か、遠くにいってしまいそうな..





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