君を想う【実話】
「終わった〜」
拓磨の声にハッとする
「まだ飯作ってねぇの?珍しい」
「ごめん、今作る」
立ち上がる瑠奈の腕を拓磨が掴んだ
「久々に外に飯でも食いにいくか?」
拓磨の笑顔が見れない
「..そうだね」
不自然に思われないように、微笑む
毎朝、拓磨に向かって海斗の名前を呼ぶ
拓磨と触れ合うたび、海斗を感じてしまう
拓磨の笑顔に姿に全てに、海斗を重ねてしまう
こんな自分は狂ってるんじゃないか、と何度も思った
でもそれが自分だけじゃないと知って、自分も拓磨さえも怖く思える
誰よりも近くにいるのに誰よりも遠い
「お前、今日変じゃない?」
拓磨は、車のバッグミラー越しに瑠奈を見る
「そうでもないよ」
「ならいいけど」
瑠奈は、窓の外をずっと眺めていた
「お前、何食いたい?」
「あんたは?」
うーん、と悩んだまま話は終わった
ねぇ拓磨は気付いてる?
"拓磨"と呼んだことがないことに
"瑠奈"と呼ばれたことがないことに..