君を想う【実話】
「いってくるわ」
「いってらっしゃい」
拓磨の仕事を見送る、もう当たり前の日課
「なんか忘れてね?」
その言葉に瑠奈は精一杯背伸びをして、キスをする
拓磨は満足そうな笑顔
これも日課
瑠奈は洗濯をして、一人でゴロゴロとテレビを見る
明日は、赤ちゃんの検診の日
最近もらった母子手帳を手に、瑠奈は微笑む
その表情は、もう紛れもなく我が子を想う母親の顔
少し眠ろうかな、と思ってベッドに入る
すぐに瞼が重くなり、瑠奈は眠りについた
‥
ズキッ―
「痛..っ」
瑠奈は、下腹部の痛みで目が覚めた
トイレにいくと、出血している
赤ちゃん..
混乱する頭で、とにかく病院に行く用意をする
その瞬間、ものすごい激痛が瑠奈を襲った
立てないほどの痛みに、全身に汗が滲むのがわかる
瑠奈は、携帯に手を伸ばして拓磨に電話をした
プルル、プルルッ―
無機質な機械音が流れる中、意識が遠のく
♪〜
ぼんやりした視界
「と..も..っ」
瑠奈はそのまま意識を失った