君を想う【実話】
「佐々木さんっ!落ち着いて!!」
泣き叫ぶ瑠奈を駆け付けた医者達が抑える
「なんで..なんで瑠奈だけ..助かってんのよ..っ」
静かな病室に、瑠奈の声だけが響いた
医者の説明なんて頭に入ってこない
溢れる涙をそのままに、ただ真っ白な天井を見つめていた
拓磨も隣で泣き崩れてる
お互いを気遣う余裕なんてなかった
この現実を受け入れるだけで、精一杯だった
‥
翌日、瑠奈は退院した
迎えにきてくれた拓磨の車の中、二人は一言も会話を交さない
そんなことを忘れてしまうほど、瑠奈の心も体も全てが空っぽだった..
それは、拓磨も同じだったと思う
失ったものが大きすぎた
瑠奈達はまた、大切な人を失ってしまった―..
重い体で、一日ぶりの家へと帰宅する
いつもは、幸せな空気が漂っていたのに
今あるのは、"絶望"だけ..
思い出の溢れたこの部屋に、吐き気さえ覚える
その日、二人が会話を交わすことはなかった