君を想う【実話】
「瑠奈は..いけない..」
強く布団を握り締めた
「..智也は中央病院にいる。俺も今向かって―..」
浜田先輩の言葉を聞かず、電話を切った
波をうち続ける心臓の音だけが聞こえる
瑠奈は隣で眠っている拓磨の頬に触れた
「..それでいいのかよ」
その声に瑠奈の体がビクッと反応する
触れる手を掴んで、拓磨は真剣な眼差しで瑠奈を見た
「拓磨..大丈夫。別になんでもないから」
その視線から逃げるように、笑えてるかもわからない笑顔を作る
「..お前の大切な人は、俺の大切な人だ」
拓磨は瑠奈の手を掴んだまま起き上がり、車の鍵を手にした
「た、拓磨っ!?」
「何かあってからじゃ、おせぇんだよっ!!」
掴まれた手に痛みが走る
「..お前だって、わかってんだろ」
その言葉に、瑠奈は唇を噛み締めて下を向いた
拓磨は、瞳さんの最後に会うことができなかった..
それをどんなに後悔してるか、瑠奈は知ってる
「拓磨、ごめん..中央病院に連れてって..」
震える声で拓磨に伝える
拓磨は頷くと、そのまま二人は家を出て車に乗り込んだ