君を想う【実話】
「待たせてごめんね」
瑠奈が乗り込むと、拓磨は煙草を消して車を発進させる
心配してくれた拓磨に、命に別状がないことだけ伝えた
「よかったな」
それを聞いた拓磨は、優しい笑顔を浮かべる
「でも..いつ目を覚ますかは、わからない..」
その現実を口にすると、やっぱり声が震えた
智也のことを信じてる..
でも、もし目が覚めなかったら..?
もし―..
「..瑠奈、お前はどうしたい?」
そう言った拓磨の声は、真剣だった
きっと、今まで見た中で一番..
その言葉が示す意味
「瑠奈..」
言葉につまる瑠奈に、拓磨は呆れたように笑う
「そばにいてぇんだろ?」
拓磨の優しくて大きな手が、瑠奈の頭を撫でる
止まっていた涙が自然と溢れだした
「瑠奈にそいつの話を聞いた時から、俺じゃ駄目なことくらいわかってた」
切ない声が車内に小さく響く
「今でもどうしようもないくらい好きだ、って伝わってきたから..」
頭を撫でる手が、ゆっくりと離れる
拓磨はそれ以上、何も言わなかった