君を想う【実話】
「この花..」
智也は横に置いたままだった花束を手に取る
「それね、智也と瑠奈」
瑠奈はオレンジとピンクの花を指差しながら言った
「なんかわかんねぇけど、知ってるような..」
智也は眉間にしわを寄せながら、花を見つめる
もしかしたら看護婦さんの言った通り、瑠奈の声が聞こえてたのかもしれない
そんなことを思いながら、智也の手を握った
「眠ってる時、夢とか見たの?」
「ん〜とりあえず、瑠奈が俺のこと呼ぶ声で目が覚めた。でも、二週間も寝てたなんてな〜」
智也は笑いながら、瑠奈の手をギュッと握り返す
普通だったら、当たり前のこと一つ一つが今は嬉しい
話せば返事が返ってくる
笑えば笑ってくれる
泣いてたら涙を拭ってくれる
手を握れば握り返してくれる
抱きつけば抱き締めてくれる
それは、当たり前のことなんかじゃないんだよね..
「るなぁ〜」
「んっ?」
チュッ―
一瞬の出来事に呆然とする瑠奈
その姿を見て、智也は悪戯な笑顔を浮かべた