君を想う【実話】
「じゃあ..電話したのあんた?」
瑠奈はもう一度、外に出て女の子の前に立つ
何も答えずにうつ向く様子から、電話の犯人を確信した
「..あんたは、何でも欲しいものが手に入るじゃない!」
寒さのせいか、大声を出したせいか、女の子は顔を真っ赤にして瑠奈を睨む
「亨だって..ずっと好きだったのに..」
白い息と共に、消えてく弱々しい声
亨は、瑠奈が昔付き合っていた男
この子、亨のこと好きだったんだ..
「智也くんまでとらないでよっ!!」
女の子の小さな目から、涙がこぼれた
その涙に瑠奈の胸がズキッと痛む
「大切なものなんて失ったこともないくせに!!」
女の子が瑠奈に掴みかかると、周りからの視線が痛いほど二人に突き刺さった
大切なものを失ったことがない..?
瑠奈は女の子の手をとって、優しく突き放す
大切なものを失ったことがなかったら
もっとうまく笑えてるかな..
「何してんだよっ!」
その声に、女の子がビクッと体を強ばらせた
声の主の足音がどんどん近づいてくる