君を想う【実話】
その時、微かに叫び声が聞こえた



嫌な予感がする..



「いっちゃ駄目!」


「ごめん!」


腕にしがみつく亜季を振り払って、瑠奈は無我夢中で走った



雅也に言ったことが後悔として頭を回る



脳裏に浮かぶのは


高校の時、瑠奈のために人に拳を向けた



智也の姿..






大きな桜の木が見えた




みんなに囲まれてて様子がわからない



人を掻き分けながら前に進む




そこには



頬を押さえて倒れてる真二がいた



向かいに立っているのは多分、智也と雅也



桜の木の大きな影で顔が見えない




早く止めなきゃ..




「瑠奈!行くなっ!」


そばにいた晴が瑠奈の腕を掴んだ



「でも..」


「大丈夫だから」


そう言った晴の笑顔に、少しだけ落ち着きを取り戻す



周りは無言でその光景を見守っていた




智也達の表情が見えない状況に不安が募る..




砂を蹴るような音がした





バキッ―





突如聞こえた鈍い音に、瑠奈は強く目をつむる



掴まれた腕から、晴の力が強まるのが伝わってきた
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