君を想う【実話】
「瑠奈んちくるの久しぶりだな」
智也は嬉しそうに、大きなぬいぐるみを抱き締める
よく考えたら、お兄ちゃんの言葉なんて気にする必要がなかった
"親父"
そんなもの
瑠奈には関係ないのだから..
「るーなっ。聞いてる?」
ハッと我に返ると、目の前に智也の顔があった
少し眉間にしわを寄せて、首を傾げてる
「ごめんごめん!で、なんだっけ?」
「..しばらく仕事が忙しくなるって話」
智也はそう言って、ソファーに深く腰かけた
「え?じゃぁ..」
「そう。だから、今みたいに毎日会ったりはできなくなる」
淡々と話しながら、溜め息のように煙草の煙をはきだす
「..そっか」
「おう」
あまりにも普通すぎる智也に、溜め息が漏れた
瑠奈なんて今、話を聞いただけで寂しくてしょうがないのに..
「..智也は、寂しくないの?」
思わず出た言葉
言った後に後悔した
がんばってね、無理しないでね、とか、もっと他に言うことがあったのに..
でも、なんだか自分だけが寂しいみたいで、不安なんだ..