君を想う【実話】
「瑠奈、誕生日おめでとう」
その声で、脳がやっと正常に動き出した
時計を見ると、針は12時を指している
「生まれてきてくれてありがとう」
智也はそう言って、瑠奈にもう一度キスをした
「..ありがとう」
驚きと嬉しさで視界が滲む
それを隠すように下を向いていると、ふわっと甘くて優しい香りが目の前に広がった
「え..これ..」
「瑠奈と..俺だろ?」
智也は照れたように笑って、"それ"を瑠奈に差し出す
その正体は..
あの花束―
智也が眠っている時に、智也を想って買った
鮮やかなオレンジ色の花
そして、瑠奈みたいだといわれて隣に添えた
淡いピンク色の花
その二つがメインとなって、仲良く寄り添う
瑠奈達にとっては、とても思い出深い花束..
「智也..ありがと..っ」
あの時の不安や恐怖
今こうして智也が隣で笑っている幸せ
様々な想いが、涙となって瑠奈の頬を伝った