君を想う【実話】
「ん?ねぇ、今のとこなんだけど」
瑠奈がぼんやりしてる間に、車は曲がり角を通りすぎてしまった
「あ、ごめん!戻るわ」
ふと見ると、男はタバコをくわえて火をつけるところだった
それで曲がり角、見落としたのか..
瑠奈はタバコの煙を外に吐き出して、空を見上げた
さっきまで出ていた星達は、黒い雲に飲み込まれて、不気味な灰色の空が広がっている
「雨ふりそうだね」
「あぁ..そうだな」
男はポツリと呟いて、瑠奈の家からほど近い、広い駐車場に車を入れた
Uターンをするために入ったのかと思ったが、車を動かす気配がない
「どうしたの?」
瑠奈が男を覗き込むと、男はゆっくり顔をあげた
差し込んだ外灯の薄明かりに照らされた男の顔は
とても悲しそうで..
「..好きなんだ」
いつの間にか、車内の音楽も消えていて、男の声だけが小さく響いた
あまりにも悲しそうな瞳に、瑠奈は思わず目を反らしてしまった
「..ごめん」
そう呟くのが、精一杯だった