君を想う【実話】



「俺..ごめん..」



男の弱々しい声が、微かに聞こえた



濡れた体をタオルで拭く



男の汗なのか涙なのか..



そんなことはどうでもよかった



激しい頭痛と吐き気が瑠奈を襲う



一秒でも早く、この場から立ち去りたかった



「瑠奈っ!」



瑠奈がドアにかけた手を男が掴む



男は何か言っていたが、瑠奈の耳には届かなかった



目を赤くして、涙を流す男の姿



同情さえ沸いてくるような、滑稽な絵面





それでも





瑠奈の人生を..





智也との未来を






壊すのには、十分だった..







ガチャッ―





男の手を振り払って、瑠奈は車からおりた



もう外は、明るくなり始めている



「泣けないや..」



声にならないような声で、小さく呟いた




涙さえも、枯れてしまったのかな..




男の涙を流す顔が、頭をかすめる



瑠奈は、まるで自暴自棄のように、フッと笑った






世界が色を失った瞬間







神様..






あなたは、どこまで瑠奈を苦しめるの?






これが、当然の報いですか..?





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