君を想う【実話】




「俺のことは、忘れろ」




智也は真っ直ぐに瑠奈を見つめて、そう言った




俺のことは、忘れろ―




前に、高校の屋上で言われた言葉




でも、あの時とは違う、智也の真剣な表情..




「さっき..智也は瑠奈のこと..忘れないって言ったじゃん..」




その眼差しに、瑠奈の言葉が微かに震えた




瑠奈は、智也を想うことさえも許されないの..?




「..じゃぁ、撤回する。俺も忘れる」




智也は視線を落として、握った手をゆっくり離した





惨めでも情けなくてもいい..




忘れないで―




そう言って、すがりつきたかった





でも..そんなこと言えなくて



「わかった」



そう言って、瑠奈は精一杯の笑顔をみせた





瑠奈は




嘘つきだった..





「そろそろ行くな..」



「..うん」





二人は




嘘つきだったね..





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